職場の人間関係を改善する方法 ③(経営者のモラルを改善する その2)

前回のブログでは、「経営者が率先して、職員定着に向けた取り組みを行って

いかなければ、絶対に職員の定着は図れない」ことをお話しました。

 

今回は、

「では経営者はどのような取り組みを行っていかなければいけないか」

についてお話したいと思います。

 

まずは、経営者自らが「自分が先頭に立って職員の定着を図る」という固い決意

を持つことから始めなければいけません。

 

職員の定着を図るには、何か特効薬的なものがあるわけではなく、日ごろの積み

重ねが大切です。

 

正しい方法を実行すれば必ず職員の定着率は上がっていきますが、すぐに効果

があがるわけではありません。

 

職員の定着には経営者の根気が必要なのです。その根気を継続させるためにも

最初に「必ず職員を定着させてやる!」という固い決意が必要となります。

 

その固い決意を持つことができたら、次はその決意を職員全員に伝えます。

 

経営者と職員のコミュニケーション不足は「高い離職率の要因の1つ」に挙げられ

ることがありますが、これは経営者が介護に対する思いや方針を職員に根気強く

伝えられていないことが原因だと考えられます。

 

ですから、経営者の思いや決意はどんどん職員全員に伝えていかなければいけ

ません。

 

できれば、終業後に職員全員を集めて行うのがいいでしょう。

 

では、何を伝えるかというと、

 ① 今よりも利用者様に楽しく元気で過ごしてもらえる介護施設にすること

   (例えば、自称「日本一利用者様の笑顔で溢れている介護施設」にしたい

    など具体的にイメージできる言葉にするとより共感を持ってもらえます)

 ② そのために、スタッフは利用者様に今よりももっと優しく元気に接して欲しい

   こと

 ③ スタッフが疲れていたり元気が無ければ利用者様にも優しく元気で接する

   ことはできないので、スタッフが楽しく働ける職場にしていくこと

を職員全員の前で宣言します。

それも必ず実現させることを宣言するのです。

 

そのためには、軽く流すように話すのではなく、真剣にかつ決意が本気であることが

職員にも伝わるように話さなければいけません。

 

次に、職員の定着を図るためにすぐに行う取組みについて説明します。

 ① 笑顔での挨拶を徹底すること

 ② 整理整頓、職場の清掃を徹底すること

 ③ 職員同士助け合って仕事をすること

 ④ 利用者様に対して虐待や横柄な態度をとる職員に対しては厳しい処置

   をとること

これらのことを今、この時点から必ず実施していくことを職員に強く言い聞かせ

ます。

 

そして、経営者も上記①~④のことを自ら率先して実践していき、職員の士気を

高めていかなければいけません。

 

具体的にどのように指導するかというと、①笑顔で挨拶を徹底することについては、

まずは経営者自らが率先して実施していきます。

 

経営者はできれば一番早く出勤して、職員が出勤するたびに経営者の方から職員

に対し、笑顔で元気に「おはようございます」と職員の目を見て挨拶していきます。

 

ポイントは

 1 経営者の方から挨拶する

 2 笑顔で挨拶する

 3 大きな声で元気に挨拶する

 4 職員の目を見て挨拶する

 5 挨拶した後、何か職員に対して一言話しかける。例えば、「今日も天気が

   晴れて気持ちいいね」など

の5つのことを意識して行います。

 

挨拶は下の者から上の者に対して行うのが社会の常識だと思っている方もおられ

るかもしれませんが、私は、上の者から率先して挨拶していくことが良い組織を

つくる一番手っ取り早く、かつ、有効的な方法だと考えています。

 

どんな組織でも基本的に上下関係は存在します。

下の者は上の者の行動や言動に非常に影響されます。

 

上の方が「笑顔で挨拶する」ことを率先して行っている事業所は、下の方も

笑顔で職員同士や利用者様に挨拶するようになり、非常に人間関係が良好な

組織となります。

 

逆に上の方が「挨拶もせず下の方に横柄な態度を取っている」ようなところは、

下の方も不愛想で態度が悪く、人間関係も殺伐とした雰囲気の組織となって

いきます。

 

これは、断言できます!

 

介護事業所に限らず、どんな職種でも職場の雰囲気を良くしたければ、まずは、

上司から部下に対する笑顔の挨拶を徹底することです。

 

また、挨拶は、出社時や退社時はもちろんのこと、用事で出かける時や帰って

きた時、送迎に行く時や送迎から帰ってきた時などありとあらゆる場面で行う

ようにしてください。

 

次に② 整理整頓、職場の清掃を徹底することについては、職員の方に整理

整頓、職場の清掃を徹底するように指導します。

 

職場の整理整頓、清掃については昔から言われている通り、やはり、職場環境

が乱れていては効率的な仕事はできません(例えば、必要な物の場所が分からな

くなるなど)し、気持ちよく仕事に取り組めません。

 

また、新規の利用見込みのお客様が来られても、雑然とした事業所では敬遠さ

れてしまいます。

 

整理整頓については、各備品の場所を決めてラベルシールを貼り、エクセルか

ワードで職場の見取り図を作成し、どこに何があるかをその見取り図にも記載

すると分かりやすいでしょう。

 

その備品を使ったときは、必ず元の場所に戻すよう指導します。

職員全員が備品を元の場所に戻すようになるまでにはある程度の時間が

かかると思いますが、指導する際は決してヒステリックにならず、

「○○○○はこの引き出しになおすように」と何度も根気強く説明してあげてくださ

い。

 

また、清掃については施設全体をできるだけきれいにすることを心掛けていた

だきたいのですが、特にトイレは重点的に行ってください。やはり、尿臭や便臭が

強い介護事業所というのはお客様から敬遠されてしまいます。また、働いている

スタッフにとってもそのような環境で働くことは好ましくありません。

トイレは僅かな尿臭や便臭もしないくらいにこまめに清掃し、清潔を保つよう

心掛けてください。

 

例えば、トイレ掃除の当番を日ごとに決めて数時間おきにチェックさせる方法

などがいいでしょう。

 

また、職員が忙しければ、経営者自らトイレ掃除を実践するのも効果的です。

 

「経営者がそんなことできるか!」とお怒りになられる方もいるかもしれません

が、カー用品販売会社の「イエローハット」の創業者である鍵山秀三郎氏は、

なんとか社員の職場環境を良くするため、社員が気持ちよく働けるようにする

ために会社やその周りの掃除を鍵山社長1人で始められ、やがて社員も自ら

掃除をするようになり(鍵山社長は社員に対して掃除しなさいとは一切言わず

、自分が行動することにより社員自らが自主的に掃除を行うようになったそう

です)、イエローハットを東証一部上場企業にまで成長させられました。

(ちなみに社員が掃除を自ら行うようになるまで12年かかったそうです。その

間、鍵山社長は1人で会社や店舗、トイレ掃除を行っていたそうです)

 

職員の意識を変えるにはまずは経営者の姿勢と行動が大切なのです。

 

③ 職員同士助け合って仕事をすることについては、非常に重要です。

 

以前、各職員の職務権限・職務範囲を明確にしようと職務権限規程を設ける

動きが一般の企業の間で話題になったことがありますが、私はこれについて

は反対です。

 

職務権限・職務範囲を明確にすることは、各職員が自分の仕事に対して責任を

持って行うことができ、一見、効率的な方法のように思われるかもしれませんが、

これは間違いです。

 

職務権限・職務範囲を明確にしてしまうとどうなるかというと、職員は決められた

仕事しかしなくなります。他の仕事をしている人が困っていても「自分の仕事では

ない」と手伝おうとせず、職務間の境界線上の仕事は押し付け合うようになります。

こうなってしまうと、人間関係の向上は難しくなり、利用者様にも良いサービスを

提供出来なくなってしまいます。

 

「仕事は助け合い」を合言葉に困っていそうな職員がいれば他の職員に手伝うよ

う指導してください。

 

ただし、この場合、仕事ができる職員の負担が増えすぎる可能性があるので、

その職員へのフォローも忘れず行うようにしましょう。

 

④ 利用者様に対して虐待や横柄な態度をとる職員に対しては厳しい処置をとること

については、経営者から職員全員に宣言をしてください。

 

介護事業所における虐待行為は後を絶ちません。もちろん、殆どの施設ではそのよ

うなことは行われていないでしょうが、私の経験では虐待とまではいかないが、利用

者様に横柄な態度を取る職員は一定数存在します。

 

利用者様にあたたかい心のこもった介護をしようと思って入社してきた新入社員は、

そんな職員の態度や言動に幻滅して辞めていきます。

 

また、そのような職員に限って、ハートが強いのかなにか分かりませんが、発言力

が強く、その事業所に居座り続けます。

 

経営者はそのような現状を認識しているにも関わらず、そんな職員でも退職されると

人手不足で困るのと、また、そのような職員とのトラブルも面倒臭いのでなるべく避

けようと、何も言わず放置している事業所がかなりあります。

 

万年人手不足なので募集をかけてやっと入社してくれた職員も上記の流れに従って、

すぐに退職してしまいます。

 

つまり、悪循環この上ない訳です。こんなことで職員の定着が図れるはずがありま

せん。

 

経営者は、この悪い流れを断ち切るために今後、利用者様に対して虐待や横柄な

態度をとる職員に対しては徹底的に厳しい処置をとることを職員全員に対して宣言

します。

 

そして、事業所を見回った際にそのような行為を行っている職員を見つけた場合は、

注意をしていきます。

 

また、職員と経営者の個人面談をできれば月1回程度は設けるようにしてください。

 

気の弱い職員や入社したばかりの職員は、なかなか思っていることを人前で言えま

せん。特に、上記のような職員がいる施設では更に口を固く閉ざしてしまい、その

うち嫌になって辞めていきます。その流れを阻止するためにも、経営者と膝を突き

合わせて話す機会を設けて、各職員がどのように感じているかを聞き出してくださ

い。時間は5分程度で結構です。最初は特に話すことも無いかもしれませんが、

毎月続けていれば、少しずつ話してくれるようになるはずです。

 

もちろん、職員から聞いた内容は経営者の心の内に閉まっておいてください。

間違えても朝礼等で発表するなどは絶対にやめてください。

 

このようなことを繰り返していくと、話の中で、横柄な態度を取る職員の話も

出てくるかもしれません。そのようなときは、名前の挙がった職員を注意して

観察するようにし、実際、行為を見つけたときは、注意していきます。

 

注意の仕方も最初の1回は口頭で行い、そのことを記録に残しておきます。

次に同じような行為を見つけた場合は、文書で正式に注意します。もちろん、注意し

た記録は前回同様残しておきます。

 

何回か文書での注意を行っても改善されない場合は、夜勤がある職場であれば、

夜勤の勤務を外して日勤だけの勤務とし、できるだけ経営者の目の届く業務に

異動させます。

 

それでも改善されなければ、解雇も考えなければいけません。

 

一般的に解雇を敬遠する経営者の方が多いですが、利用者様や良い職員を守る

ためには、やむを得ない解雇も必要です。

 

もちろん、解雇は最後の手段なので、それまでに注意と説得を繰り返し、その記録も

残しておきましょう。解雇の正当性を裏付ける資料となります。

 

というわけで、長くなりましたが、職場の人間関係を改善するために経営者がまず

実施しなければいけないことについてお話させていただきました。

 

何度も言いますが、介護事業所というか会社というものは経営者のものです。

会社の何を決めるにも最終的には経営者に決定権があるのです。

その自分の所有物である会社を良くしたいのであれば、まずは所有者である自分

が真剣に取り組まなければ、ほかの誰も真剣に取り組んでくれる筈がありません。

人手不足で悩まれている経営者の方はすぐに行動を起こしてください!

経営者の方が正しい思いを持ち、正しい方法で真剣に取り組めば必ず職員の定着

は図れます!

 

 

(資料)
公益財団法人 「平成29年度 介護労働実態調査結果について」
http://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/h29_chousa_kekka.pdf